来ぬ人を
来ぬ人を松帆の浦の夕なぎに
焼くや藻塩の身もこがれつつ
権中納言定家
(意訳)
待ってもあなたは来ないけど
やっぱり私はいつまでも
あなたを思い胸をこがします 『うた恋い。』杉田圭
自分の胸をこがすほどの人物は、なかなか心からいなくなってくれない。
むしろ、忘れたと思うときこそ、ふと思い出の中に現れては、
「まだ君は心の中にいたのか」と驚かせるくらい。
たぶんまだ、大切な人を失ったことのない人にはわからないし、
わからないままでいるほうが幸せだと言うことにも気付かないだろう。
胸をこがすほど会いたいのに会えない人なんて、
人生でそんなに多くはないだろう。
なくなった、会えなくなったと聞いても、
「ああ、残念、生きているときにもう一度会いたかった」などと嘯いて
線香を送るくらいが、人との距離はちょうどいい。
思い出しては胸をこがすような人には出会わないほうが幸福かもしれない。
でも、そんな幸せな人より、会えない苦しみから「愛」を学ぶ人間のほうが、
きっと誰より優しいだろう。
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