もう二度と、声を聞けないあなたへ

もう二度と逢えない、

私のことを一番好きだと言ってくれた、あなたへ。

逢えなくなって、数年がたちます。

私は、なんとか元気です。

あなたの家は、あなたがいなくなってからも変わらずそこにあります。

チクタクと音を立てる時計もいつもとおなじように動いていました。

でもそこに、あなただけがいない。

私が生まれる前からあなたはずっとそこにいたのに。

もういない。

それがとても奇妙で、落ち着かなくて、

気づいたら私は、あなたの家に行けなくなりました。

二度と逢えないと言うことは、

二度と声を聞けないことだと気づきました。

あなたの気配は家のそこかしこにあるのに。

それが、どうしようもなくさびしいです。

写真のおかげで、いつでもあなたの顔を見ることができます。

だけど、声を聴いて会話することはもう二度とない。

そのどうしようもない事実が、目の奥を熱く焼いて、

受け入れられない自分がいます。

こんな弱気なことを考えて、涙を流していることを知ったら、

きっとあなたに心配をかけてしまう。

わかっているんです。

思い出ばかりにすがっていてはいけないって。

でも、あなたがいなくなってから初めて、

自分が無条件に愛されていたのだということを理解しました。

そして同時に怖いのです。

きっともう二度とそんな風に愛してもらえることはない。

あなたのように誰かを愛せない。

そんな自分がとても怖いのです。

私は、あなたが愛してくれ分も、ちゃんとあなたを愛せていたでしょうか？

ちゃんとあなたに、好きだよと言葉にして伝えていたでしょうか？

わがままばかり言ったり、言うことを聞かない私に、

あなたが時々さびしそうな眼をしていたことを知っていました。

でも私には、それが何なのかわからなかった。

ごめんね。

本当にごめんなさい。

もう二度と言葉にしてくれないとわかっているのに、

人はそれでも誰かの愛がほしいようです。

私はあなたの愛がほしい。

まだあなたに大好きでいてほしいし、大好きだと伝えたい。

いつまでも子供みたいなわがままを言う私を、

きっとあなたは困った顔で見ているでしょう。

でもゆるしてね。

あなたが生きていたことを

あなたが私にくれたものを

全部抱えて生きて、いつかまた逢えた時に

また笑って話を聴いてね。

あなたのことが誰よりも大好きな私より。

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